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 湯布院で部屋数6部屋の小さな宿「御宿なか屋」を営む衛藤浩さんが、ホームページを開設したのは1998年の8月、大阪の有名料亭での調理の修行から湯布院に帰り14年目のときだった。

 衛藤さんの料理が人気を呼び口コミでお客さんも年々増え続けてきた「御宿なか屋」も、不況の兆しが見えだした湯布院の中で宿泊客が前年割れしそうな気配がしていた。
 「なんとかしなければ」と考えた衛藤さんは、ガイドブックへの広告を選ばずHP開設を選んだ。宣伝広告ではなく、等身大の自分の宿を自分自身の言葉で伝えたかったからだ。
 そして宿への思い、湯布院への思い、プロの料理人としてお客様をお迎えする自分の気持ちを書き綴ったレポート用紙を私に手渡した。
「華美にせずに、うちの色を出してくれ」衛藤さんからのただ一言のデザイン依頼項目だった。
 それで出来上がったHPは今まれにみる思いの詰まった地味でシンプルなページとなった。こんなに字の多いページを読んでくれるのだろうか?私も少し心配になった。


HP写真は2000年

 検索サイトに掲載され、すぐにメールや電話で問い合わせや予約が入ってきた。メールには衛藤さんがたどたどしい指使いで丁寧に返事を書く。今や、6部屋しかない部屋の1〜2部屋はインターネットから予約したお客様で埋まる。
「自分自身で思いを込めたホームページを発信したのだから、お客様に対しそれと違えることはできない」衛藤さんはより身を引き締め、包丁を握る。
「ホームページそのままのお宿でした。今度は老いた父母になか屋の料理を食べさせたい」そんなメールが衛藤さんのもとに届いた。
 「御宿なか屋」は2001年に立て替え新築になる。しかし、規模は今まで通り。あくまでも衛藤さんの等身大のお宿なのだ。

* 文章は2000年のものです。2001年7月「御宿なか屋」はリニューアルオープンし、2002年の現時点、インターネットのHPをきっかけとした予約は80%近くを占めています。

御宿なか屋ホームページ(2002年) http://www.nakaya-yufuin.jp

アウルネットワーク 松村亮司

2000年 大分合同新聞連載「デジタルの小窓」へ執筆


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